はじめに
昨今、 Flutter
や React Native
などによるiOSアプリとAndroidアプリの同時作成が少しずつ現実的に実践されるようになってきており、
筆者的には、2010年代前半以来のリブームのように感じられる今日此頃です。
2010年代前半は、Facebookを筆頭に、最終的にはフルネイティブに舵を切り直すプロダクトが多かったイメージがあるのですが、
各種OSの浸透および安定化に伴い、今回の流れはある程度続く可能性があるのではと思わずにはいられません。
しかしながら、 Flutter
は Dart
というGoogle製の言語を利用し、
React Native
は JavaScript
および React
の知識が必要になります。
既に Swift
でのiOSアプリの開発や Kotlin
によるAndroidアプリの開発に慣れているエンジニアであれば、
言語書式が比較的似ていることから、OSやIDEの違いさえ把握できれば学習コストは大幅に抑えられる可能性があります。
一方で、それでは両OSアプリの同時作成の恩恵に預かることができないため、
何か良いものがないかな〜と思っていたところ、
『 Scadeは、Swiftを使用してAndroidアプリ開発を可能にすることを目指す』という記事を見つけました。
これは面白そうだなということで、今回はScadeについて見てみたいと思います。
Scadeとは
公式ホームページによると、 Scade
とは『次世代のモバイルアプリの開発基盤』と言われています。
具体的にできることとしては、
Swift
言語でiOS&Androidの両OSのアプリを開発できるSCADE Simulator
というScade
アプリ内で提供されているシミュレータが利用できるXcode
やAndroid Studio
で利用している各々専用のシミュレータも利用できる- GUI上でアプリをデザインすることができる
などがあります。
Swift5にてABIの安定化を達成したこともあってか Scade
自体のバージョンも v1.0
に到達しています。
しかしながら、現在、最新の Scade
は Xcode11 ( つまり Swift5.0 )までしか対応しておらず、
お使いのMacで Xcode11.3
が入っている場合は Scade IDE
上でのコンパイルに失敗してしまうため注意が必要です。
チュートリアル – Hello World
何はともあれ、 Scade IDE
を使ってチュートリアルを進めてみましょう。
Scade
のドキュメントは非常に充実しており、チュートリアルとして Hello World
が用意されています。
参考:Scade: チュートリアル – Hello World
上記リンク先に動画付きで説明がなされているので、大筋で困ることはないと思います。
ただ、ドキュメントが古いのか、全く同じように作成することはできなかったため、紹介がてら使い方を見ていきたいと思います。
まず、ソフトウェアのDLページですが、こちらになります。
※無料で利用できます。
プロジェクトの作成
続いて、プロジェクトの作成方法を説明します。
① ナビゲーションバーから、Scade Projectを選択する
② プロジェクト名を決める
これだけで、IDE上に②で指定した名前のプロジェクト名が作成されていることを確認できると思います。
レイアウトの作成
Scade
の特徴でも説明したように、 Xcode
や Android Studio
同様にGUIからレイアウトを決めることが可能になっています。
今回は、『チュートリアルのHello World』ということで下図のようなレイアウトを作成します。
では説明していきましょう。
① main.pageファイルを開く
② 右メニューのPaletteのWidgetsからLabelとButtonをドラッグ&ドロップする
③ 右メニューのPaletteのLayoutsからGrid1つとVertical2つをドラッグ&ドロップする
④ Grid内にVerticalを2つ子要素として追加し、それぞれのVerticalの子要素としてLabelとButtonを追加する
⑤ Gridの上下左右にレイアウトを設定する
⑥ Label側のVerticalのレイアウトを設定する
⑦ Button側のVerticalのレイアウトを設定する
⑧ Labelのレイアウトと色を設定する
⑨ Buttonのレイアウトと色を設定する
実行処理の実装
今回のチュートリアルでは、下記機能を持たせます。
- ボタンをタップしたときにラベルの文字列を変更する
これを実現するために、 main.page.swift
ファイルを開き、実行処理を書きます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 |
|
処理内容を説明すると、下記の通りです。
① getWidgetByName
を使ってボタン要素を取得しています
② onClick
でボタンのタップを補足し、 append
で処理を追加しています
③ ラベルの文字列変更のために getWidgetByName
で取得したラベルの text
に変更したい文字列を代入しています
シミュレータでの確認方法
左上からターゲットとなるプロジェクトを選択すると、実行するシミュレータを選択できます。
シミュレータを選択した後で、三角の実行ボタンを押下することでシミュレータを実行できます。
因みに、下図のように簡単にシミュレータの端末を変更する機能も備わっています。
まとめ
さて、如何でしたでしょうか?
SwiftでiOS/Androidアプリを同時に開発できるなんて夢のような企画ですよね!
ただ、
- Swiftバージョンへの追従ができていない
Scade
のIDEがEclipse
ベースでもっさりしているXcode
と同じ名称の部品があるので、同じように使えると思うと案外うまくいかない
といった課題も感じました。
しかしながら、 Scade
が実用レベルに到達するようになれば、 Flutter
や React Native
と同じく1つの選択肢として普及するようになる可能性もあることでしょう…
まあ、今回は単純に発想が面白かったということで紹介にとどめたいと思います。
と言ったところで本日はここまで。